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JICA課題別研修

 JICA課題別研修

 国内最南端のJICA拠点であるJICA沖縄では、亜熱帯性・島嶼性や文化・歴史を経て培った沖縄県ならではのノウハウや技術を活かした研修を年間約50コース実施しています。保健系課題別研修では、「公衆衛生活動による母子保健強化」、「地域保健システム強化による感染症対策」、「エビデンスに基づく公衆衛生計画立案」という3つのテーマを、公衆衛生や地域保健のアプローチによって、研修員の自国の保健課題の解決に向けた技術協力を行っています。また、「医療関連感染予防・管理」や、若手の研修員を対象とした青年研修「生活習慣病予防コース」も実施しています。
 2018年度よりJICAの保健医療分野の技術協力に携わってきた株式会社ティーエーネットワーキングが研修受託機関となり、国立大学法人琉球大学との強力なパートナーシップの元、医学部保健学科を中心に琉球大学からの技術協力を受けて研修を実施しています。

関係者からのメッセージ:
小林 潤
琉球大学 医学部保健学科 国際地域保健学教室 教授
沖縄の保健医療の歴史、低中所得国の開発の経験これを融合させて学びあいの場所を作り出しています。多くの国から多くの研修生を受け入れることは大変な作業ですが、JICA沖縄、TAネットワーキングと琉球大学のチームワークで実現させてきました。これから得るものは単なる満足感だけでなく、国際保健を目指す学生への教育に還元させ、さらに海外での事業実施に役立てています。実際に研修コースに多くの学生が参加し学んで、海外のフィールドへ飛び立っています。
 
仲間 尚子
JICA沖縄センター 研修業務課
JICA沖縄センターでは、1985年の開所に先立つ1982年度から保健医療分野の研修を実施してきました。戦後の沖縄には、この分野に課題を抱える国に応用していただける経験が豊富で、これまでに1000人以上の研修員が学び、帰国後は母国の母子保健、感染症対策、保健政策策定、生活習慣病対策等に尽力しています。研修には琉球大学をはじめ沖縄県内の保健/看護学生が参加することもあり、SDGsゴール3「すべての人に健康と福祉を」を実現するための貴重な「学びあいの場」となっています。
 
建野 正毅
株式会社ティーエーネットワーキング 技術顧問
 

公衆衛生による母子保健強化コース 



「公衆衛生活動による母子保健強化」
 アフリカ地域をはじめとする低中所得国においては、一般に妊産婦や乳幼児の死亡率が高く、母子保健分野は援助重点課題の一つです。そのため世界各国の多様な協力が展開された結果、一定の母子保健指標の改善はみられるものの、都市部と地方の格差によるインフラの未整備や貧困問題、教育環境等社会背景から依然として深刻な問題を抱えています。また、保健施設や機材の不足、慢性的な保健人材不足、コミュニティーで働くヘルスワーカーの支援体制の不足等、保健システムが有効に機能しておらず、地域住民が満足に保健サービスを受けられない現状があります。また、マラリア、HIV/エイズ等感染症の罹患率も高く、母子の健康を脅かす要因となっています。
 沖縄県は、沖縄戦後の深刻な物資・人材不足の中で、関係者の優れた連携等により極めて低い母子の死亡率の実現、感染症の撲滅、ひいては離島部の国民皆保険の普及を実現させてきました。資源に恵まれない中で、地理的ハンディを背負いつつも、保健医療を改善してきた経験は途上国の保健状況改善や向上に役立ちます。この研修では、沖縄・日本が有する復興期及び現在の保健システム(沖縄県の行政組織の機能、役割の変遷や地域保健システムの仕組み、母子保健に従事する人材育成、地域資源の活用の方策等)を学ぶとともに、低中所得国での母子保健分野の開発の経験と融合させた講義とワークショップを多く盛り込んでいます。これらから単に日本の経験を学ぶだけでなく、自国への実践に反映させられるようにカリキュラムが組まれています。
 さらに沖縄は日本のなかでは貧困と早期妊娠といった低中所得国と類似した課題を現在でも有しておりこの点では日本のなかで先駆けて対策も行っており、研修員ともに知見を共有し議論を展開して解決策を共に探っています。
 
2018年度
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)」(A) 4ヶ国 (ブルンジ1名、ナイジェリア2名、シエラレオネ2名、スーダン2名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(ポルトガル語)」(B) 4ヶ国(アンゴラ2名、ポルトガル4名、モザンビーク2名、サントメプリンシペ1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)」(C) 6ヶ国 (アフガニスタン1名、インドネシア1名、ナウル1名、パキスタン1名、パプアニューギニア1名、東ティモール1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(スペイン語)」(A) 6ヶ国(コロンビア2名、ドミニカ共和国2名、エクアドル1名、エルサルバドル2名、パナマ1名、ペルー2名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(スペイン語)」(B) 5ヶ国(ボリビア2名、グアテマラ2名、ホンジュラス2名、ニカラグア2名、パラグアイ2名)
2019年度
「公衆衛生活動による母子保健強化(A)」(英語) 6ヵ国(ブルンジ1名、レソト1名、ニジェール1名、ナイジェリア2名、シエラリオネ1名、ウガンダ1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(B)」(英語) 7ヵ国(アフガニスタン2名、バングラデシュ1名、フィジー1名、ジョージア1名、パプアニューギニア1名、サモア1名、東ティモール1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(C)」(スペイン語) 6ヵ国(ドミニカ共和国1名、エルサルバドル1名、グアテマラ1名、ホンジュラス1名、メキシコ1名、及びニカラグア1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(D)」(スペイン語) 4ヵ国(コロンビア1名、パラグアイ2名、赤道ギニア2名、ペルー1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(E)」(ポルトガル語) 5ヶ国(アンゴラ2名、ブラジル2名、ギニアビサウ1名、モザンビーク1名、サントメプリンシペ1名)
 
2020年度(遠隔研修)
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)(A)」 5ヶ国6名(アフガニスタン1名、バングラデシュ1名、マラウイ2名、シエラレオネ1名、スーダン1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(スペイン語)(B)」 8ヶ国9名(エルサルバドル2名、ホンジュラス1名、グアテマラ1名、エクアドル1名、パナマ1名、ボリビア1名、パラグアイ1名、ドミニカ共和国1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(ポルトガル語)(C)」 2ヶ国7名(ブラジル5名、モザンビーク2名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)(D)」 4ヶ国5名 (ジョージア1名、マーシャル1名、ミクロネシア1名、東ティモール2名)

2021年度(遠隔研修)
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)(A)」 3ヶ国7名(ネパール2名、パプアニューギニア2名、フィリピン3名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)(B)」 5ヶ国5名(アゼルバイジャン1名、ジョージア1名、リベリア1名、シエラレオネ1名、ザンビア1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(スペイン語)(C)」 8ヶ国11名(ボリビア2名、エクアドル1名、エルサルバドル2名、グアテマラ1名、ホンジュラス1名、パナマ1名、パラグアイ1名、ペルー2名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(ポルトガル語)(D)」 2ヶ国4名 (ブラジル1名、アンゴラ3名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(A)」および「公衆衛生活動による母子保健強化(D)」(第2弾遠隔研修)(英語) 3ヶ国4名(シエラレオネ1名、ジョージア1名、東ティモール2名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(スペイン語)(B)」(第2弾遠隔研修) 6ヶ国7名(ボリビア1名、ドミニカ共和国1名、エルサルバドル2名、ホンジュラス1名、パナマ1名、パラグアイ1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(ポルトガル語)(C)」(第2弾遠隔研修) 1ヶ国5名(ブラジル5名)

2022年度(遠隔研修・ハイブリッド研修)
「公衆衛生活動による母子保健強化(英語)(A)」 5ヶ国7名(リベリア1名、ミクロネシア1名、パプアニューギニア1名、フィリピン3名、シエラレオネ1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(スペイン語)(B)」 9ヶ国12名 (ボリビア2名、コスタリカ1名、ドミニカ共和国1名、エクアドル1名、エルサルバドル2名、ホンジュラス1名、ニカラグア2名、パナマ1名、パラグアイ1名)
「公衆衛生活動による母子保健強化(ポルトガル語)(C)」(ハイブリッド研修) 5ヶ国8名 (ブラジル2名、サントメ・プリンシペ2名、モザンビーク1名、カーボ・ベルデ1名、アンゴラ2名)
 
クルス・デ・ゴメス アイデー E.
エルサルバドル国保健省サンサルバドル県
サン・アントニオ・アバド地区保健班
看護スーパーバイザー(看護師)
研修での最大の学びは、学校保健における養護教諭の役割でした。効果的なコミュニケーションに基づく支援関係は、健康促進と予防について非常に大きなメリットとなります。そして、より効率的、効果的かつ人間的な暖かみのあるサービスを低いコストで行うための適切なスペース(保健室)を提供することで、生徒たち、そして将来的には母子の健康を改善につながります。健康管理、応急処置、健康相談にまつわるアクティビティを発展させるためのボランティア精神、献身そして教養、その全てが安全な環境の中での心身の健康の維持向上、つまり学校教育の発展に繋がっていると思いました。
帰国後はサンアントニオ アバドの学校にそのようなスペースを作るために、週に3日ティーンエイジャーに着目した業務を行う看護士が活動しています。健康教育の対象が7~18歳に拡大され、性教育、暴力の予防、生活のためのスキル、栄養、予防接種、自尊心、心理面へのケア、健康フェアの開催などを実施しました。父親、コミュニティリーダー及びティーンエイジャーや若者も積極的に参加しています。
学校に看護師がいることにより、若年妊娠予防のための性教育を強化することが出来ています。さらに、暴力の問題を特定したり、より様々な種類の暴力に対応するために常勤の心理士の申請をしています。これら全ての功績は、関係者による献身や協力、参加によって学校における性教育にまつわる各テーマの情報や教育が強化されたことによるものです。
上原 真名美
琉球大学 医学部保健学科 国際地域保健学教室
公衆衛生活動による母子保健強化 コースリーダー
コースリーダーの経験を通し、多くの国の母子保健の現状や対策を学びました。世界各国からの参加がありますが、研修員の方たちの「母子のためにアクションを起こしたい」という熱い思いは万国共通です。約2ヶ月間を一緒に過ごすことで、相互理解が深まり、国を越えたネットワークが構築されることはこの研修の強みだと思います。私自身も含め、研修員の方が沖縄での学びをさらに発展させ、それぞれの地域での母子保健の向上に繋げていけるように活動を続けて行きたいと思います。

地域保健システム強化による感染症対策コース



「地域保健システム強化による感染症対策」
 結核、マラリア、HIV/エイズをはじめとする様々な感染症の対策は、重点課題として長年に亘り支援を投じている分野です。現在も感染症対策は多くの国々でJICAの技術協力プロジェクトが展開されていますが、医療資材の提供や検査・治療技術の移転とともに、これらを効果的、効率的に機能させるための仕組みづくり、行政組織能力強化も主要な目標として位置づけられています。 
 他方、近年は多くの低中所得国において地方分権化が推進され、保健セクターにおいても地方自治体への権限委譲が進められています。中央政府には自治体への指導、支援、自治体においては保健事業計画の策定、サービス提供の実施管理を主体的に行う能力の強化等、中央省庁のみならず各レベルでの組織能力強化が求められています。
 JICA沖縄では、長年検査分析技術の習得を目的とした集団研修「衛生環境分析技術者」(1983-2007)を実施してきました。2008年からは感染症対策をとりまく環境の変化を踏まえ、検査体制やサーベイランスシステム、予防対策に関する仕組みや各関係機関の連携体制と機能を検証することにより研修参加組織の課題分析や改善策の構築を促す研修に改編しました。さらに、2014年度からは保健システムの観点をさらに強調した研修を実施しています。
 この研修では、疾患別の対策の説明ではなく、保健システムに着眼しどの感染症に対しても対策方針を作成できるスキルの習得をめざしています。研修後に各参加者のレベル(国、地方自治体)の保健医療システムが効果的に機能することにより、住民に対して感染症に関する適切なケアや予防対策が提供されることを目的としています。

2018年度
「地域保健システム強化による感染症対策(A)」(英語) 7ヶ国(コンゴ民主共和国2名、ケニア1名、リベリア2名、マラウイ1名、ミャンマー1名、ナイジェリア1名、パキスタン1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(B)」(英語) 6ヶ国(アフガニスタン2名、エジプト1名、インドネシア1名、セネガル1名、タンザニア1名、イエメン1名)

2019年度
「地域保健システム強化による感染症対策」(英語) 11ヵ国(アフガニスタン1名、エリトリア1名、ホンジュラス1名、インドネシア1名、リベリア1名、モーリシャス1名、ミャンマー1名、ナイジェリア1名、パキスタン1名、シエラレオネ1名、イエメン1名)
 
2020年度(遠隔研修)
「地域保健システム強化による感染症対策(A)」(英語) 4ヶ国5名(アフガニスタン2名、エリトリア1名、ケニア1名、パキスタン1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(B)」(英語) 4ヶ国5名(マレーシア2名、ソロモン1名、バヌアツ1名、ベトナム1名)

2021年度(遠隔研修)
「地域保健システム強化による感染症対策(A)」(英語) 7ヶ国9名(バングラデシュ1名、インドネシア1名、ネパール2名、パプアニューギニア2名、フィリピン1名、サモア1名、バヌアツ1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(B)」(英語) 6ヶ国8名(アンティグア・バーブーダ1名、アルゼンチン1名、ベリーズ3名、エクアドル1名、ガイアナ1名、ジャマイカ1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(C)」(英語) 4ヶ国4名(アルメニア1名、ジョージア1名、イラン1名、ヨルダン1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(D)」(英語) 6ヶ国10名(ガーナ1名、リベリア1名、モザンビーク1名、ナイジェリア2名、ウガンダ4名、ザンビア1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(A)」および「地域保健システム強化による感染症対策(B)」(第2弾遠隔研修)(英語) 3ヶ国4名(エリトリア1名、マレーシア2名、バヌアツ1名)

2022年度(遠隔研修・ハイブリッド研修)
「地域保健システム強化による感染症対策(A)」(ハイブリッド研修)(英語) 7ヶ国10名(インド2名、インドネシア2名、ネパール1名、サモア1名、スリランカ1名、ベトナム1名、パプアニューギニア2名)
「地域保健システム強化による感染症対策(B)」(英語) 4ヶ国4名(アンティグアバーブーダ1名、ブラジル1名、ガイアナ1名、セントクリストファーネイビス1名)
「地域保健システム強化による感染症対策(C)」(英語) 6ヶ国9名(コートジボワール1名、エジプト2名、ガーナ1名、マダガスカル2名、モザンビーク1名、ナイジェリア2名)
「地域保健システム強化による感染症対策(D)」(英語) 5ヶ国7名(アルメニア1名、アゼルバイジャン2名、ウクライナ2名、ジョージア1名、パキスタン1名)
 
ギラマイケル カーセイ ヒブティジ
保健省 医療サービス部 感染予防品質保証班長
研修では、日本では様々な保健サービスが互いを補完し合いながら、質の高いサービスを提供していることを学びました。
例えば、空港や港湾の検疫で感染症の疑いのある海外からの渡航者を隔離するまでの手順は、現在のCOVID-19対策にでも参考になっています。琉球大学病院で院内感染対策のために手指衛生や医療廃棄物処理の手順を定め、看護師をはじめ医療従事者がそれを遵守しており、自分の病院でも同じ仕組みづくりをしたいと考えています。
学校保健での実践的な取り組み、宮城県岩沼市の震災からの復興や防災対策、八重山でのマラリア撲滅の歴史など、エリトリアの環境にも適用ができることを学びました。また、アクションブラン策定の際、SWOT分析や目的分析の手法を学びましたが、帰国後アクションプランを職場の上司に説明し、実施を促す際にも活用できました
研修プログラムはよく練られており、様々な国の研修員たち共に学ぶことが出来たのは大変貴重な経験でした。研修で得たことを自分の任地、そこに暮らす人々への保健サービスの改善に活かしていきます。
 
澤崎 康
地域保健システム強化による感染症対策 コースリーダー
株式会社ティーエーネットワーキング 技術顧問
研修生は、アフリカ地域や、アジアから中米まで、世界各地から多様な背景の方々です。しかし皆、感染症対策において研修では共通の目標テーマに向かって心は一つになりました。お互いに学び合い、沖縄での経験や現場からたくさん学んでくれています。特に、2020年2月以降のCOVID-19では、この研修で学んだ感染予防など、まさにCOVID-19 対策に直結した学びでした。研修で培われた「いちゃりば ちょーでー」(行き会えば、兄弟)の心は、研修終了後もSNSのグループで連絡を取り合い、それはその後、それぞれがCOVID-19の対策の前線でもその絆は活かされています。
 


エビデンスに基づく公衆衛生計画立案コース



「エビデンスに基づく公衆衛生計画立案」
 近年、低中所得国においてもエビデンスに基づいて公衆衛生や保健計画を策定する重要性が認識され、保健計画立案者はエビデンスに基づく公衆衛生アプローチやその技法を活用しています。
 本研修は、参加国においてエビデンスに基づいた公衆衛生計画の立案が促進されることを目的とし、沖縄における公衆衛生やプライマリーヘルス分野の経験を共有しています。琉球大学医学部保健学科国際地域保健学教室に加え、東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室から技術支援を受けて、定量的・定性的データの入手方法、データに基づく保健計画策定に関する沖縄及び日本の経験についても学び、保健計画策定に必要な技術を習得しています。
 必ずしも国際的な科学論文として掲載されたものだけがエビデンスでなく、それぞれの国、それぞれの地域のエビデンスの重要性の理解にも重きを置いています。沖縄には公衆衛生看護師が地域診断を行い受け持ち地域のエビデンスをつくっていました。彼らの眼と足で情報を集め、紙と鉛筆でエビデンスを作り、それをもとに計画を作成し課題を克服していった歴史があります。またハンセン氏病の隔離政策は、国際的エビデンスがありながら政策に反映されず不要に長く続いた歴史もあります。机上の実践力だけでなく、実務での応用の理解に重きをおいた研修になっています。
 また、本研修には、琉球大学及び東京大学の大学院生が「研修を活用したグローバル人材育成事業」を通じて参加してきました。大学院生にとって、保健計画立案のエキスパートである研修員から各国の現状や取り組みを学ぶことは大変貴重な機会です。また、大学院生からは日本の保健システムや沖縄の公衆衛生の歴史についての知識を共有するなどの貢献もしています。

2015年度
「エビデンスに基づく公衆衛生(EBPH)計画立案(A)」(英語) 6ヶ国(アフガニスタン1名、イラン1名、モルドバ1名、フィリピン1名、タジキスタン2名、バヌアツ2名)
「エビデンスに基づく公衆衛生(EBPH)計画立案(B)」(英語) 5ヶ国(ガーナ2名、ケニア2名、マラウィ3名、ナイジェリア2名、ザンビア2名)
 
2016年度
「エビデンスに基づく公衆衛生(EBPH)計画立案」(英語) 6ヶ国(ガーナ2名、ケニア2名、マラウィ2名、ナイジェリア1名、シエラレオネ2名、ザンビア3名)
 
2017年度
「エビデンスに基づく公衆衛生(EBPH)計画立案」(英語) 5ヶ国(アフガニスタン3名、ガーナ2名、ナイジェリア2名、パラグアイ1名、ザンビア4名)
 
2018年度
「エビデンスに基づく公衆衛生(EBPH)計画立案」(英語) 6ヶ国(アフガニスタン1名、バングラデシュ1名、ナイジェリア1名、サモア1名、シエラレオネ1名、ザンビア1名)
 
2019年度
「エビデンスに基づく公衆衛生(EBPH)計画立案」(英語) 7ヶ国(エスワティニ1名、エチオピア1名、イラク2名、リベリア1名、シエラレオネ3名、ザンビア1名、ソロモン1名)
 
2020年度(遠隔研修)
「エビデンスに基づく公衆衛生計画立案」(英語) 7ヶ国9名(アフガニスタン1名、エチオピア1名、ガーナ1名、ケニア1名、リベリア1名、 シエラレオネ1名、イラク3名)

2021年度(遠隔研修)
「エビデンスに基づく公衆衛生計画立案」(英語) 12ヶ国14名(バングラデシュ1名、コンゴ民主共和国1名、インド1名、ケニア2名、キルギス1名、リベリア1名、マダガスカル1名、ナイジェリア2名、南アフリカ1名、イエメン1名、イラク1名、スーダン1名)

2022年度(遠隔研修)
「エビデンスに基づく公衆衛生計画立案」(英語) 4ヶ国5名(コートジボワール2名、リベリア1名、メキシコ1名、シエラレオネ1名)
 
アダム アナス
ガーナ保健サービス
イーストマンプルシ・ディストリクト保健情報管理部
ディストリクト保健情報およびCHPSコーディネーター
「情報は力なり」と言われますが、情報が知識となり、社会の問題解決に活用される時、さらなる力となります。私は幸運にも2017年にエビデンスの研修に参加する機会を得ました。日本の保健システムや、情報をエビデンスとして自分のフィールドで活用する方法を学びました。当時ガーナはMDGs以降の公衆衛生のサービス向上を急速に推し進めている時期でしたので、良いタイミングで研修に参加することができました。
帰国後、母親たちの知識の向上やレファラルシステムの強化に活用した、ポジティブデビアンスのアプローチが、研修での一番の学びでした。母子保健サービスを最大限に活用している母親たちを見つけ出し、彼女たちに地域の妊娠・授乳クラスで教師役をお願いしました。ポジティブデビアンスの母親たちは、他の母親たちに施設における母子サービスの活用方法、妊娠時や授乳時の危険な兆候の見つけ方、栄養や衛生面の注意事項について教えてくれました。また、彼女たちは伝統的産婆たちとも協働し、危険の兆候がある妊婦の保健施設へのリファーを促してくれました。10万人あたりの妊産婦死亡が119.7から62.9へと大幅に減少できたのも、彼女たちが果たした役割は大きいと考えています。
 
 
野口 祐子
琉球大学 医学部保健学研究科 国際地域保健学教室
2019年に実施された、「エビデンスに基づく公衆衛生計画立案」コースに琉球大学の大学院生として参加させて頂きました。コース期間中に個々に計画を立案し、最終発表まで行うこのコースは、私にとっては大変な場面もありました。しかしながら、各国の保健分野の第一線で従事されている研修生の方々と共に学び、講師の先生や研修生の方々からアドバイスを頂きながら計画立案を行う課程は非常に勉強になり、貴重な経験であったと思います。
 
医療関連感染予防・管理コース、青年研修・生活習慣病予防コース



青年研修「生活習慣病予防」
 生活習慣病は、低中所得国においても大きな課題です。とりわけ近年急激に所得水準が向上し食生活が変化したアジア諸国や、大洋州諸国では生活習慣病の有病率が高く、心血管疾患、糖尿病、悪性腫瘍が死因の約8割を占めます。一方、そのほとんどが生活習慣の改善により予防可能であると考えられており、予防活動の導入が望まれています。JICAの青年研修事業は、低中所得国の将来を担う青年層(20 歳~35 歳程度)を日本に招き、日本の経験、技術を学ぶことにより、将来の国づくりを担う人材の育成に協力する事業です。
 生活習慣病に関する取り組みは沖縄において現在進行形であり、県や自治体等においてさまざまな取り組みがなされています。気候や地理的状況、島嶼文化の脆弱性や貧困等、アジア諸国や大洋州諸国との共通点が多い沖縄県においても、生活習慣病予防を実施できる若手人材を育成することは有益です。本研修では、ヘルスプロモーション、食育・食生活、学校保健についての講義、健康診断施設や運動施設の視察、調理実習やウォークラリーの体験を通じて、生活習慣病予防活動の在り方について理解し、自国における課題解決について活動計画を作成しました。
 2019年の大洋州諸国を対象とした研修にはJICAインターン2名(大学生1名、大学院生1名)が参加しました。インターン・研修員間での交流や学び合いを経て、双方にとって刺激を得る機会となりました。


2019年度
「大洋州/生活習慣病予防コース」(英語) 5ヵ国(フィジー2名、ミクロネシア2名、パラオ1名、パプアニューギニア3名、サモア2名)
2022年度(遠隔研修)
「タイ/生活習慣病予防コース」(英語) 1ヶ国8名(タイ)

「医療関連感染予防・管理」
 新型コロナ・ウイルス感染症(COVID-19)が予想を覆すスピードで広まるなか、医療機関内の感染拡大が世界中で問題視されています。最前線の医療従事者は一般人よりも3.4倍感染リスクが高いという調査結果もあります。感染拡大初期段階の2020年2月から3月にかけては、中国とイタリアでの全感染者数に占める医療従事者の割合が9~10%を占めたという報告もあります。医療機関内での感染は、入院患者や外来患者への感染、基礎疾患のある患者に感染した場合の重症化リスクの増大、医療機関の一時閉鎖などによる地域医療サービスの機能停止・医療崩壊を招く可能性があり、COVID-19の長期化を踏まえ、改めて医療従事者及び入院患者の感染予防・管理が喫緊の課題となっています。日本でも一部の医療施設で集団感染が発生していますが、その経験を踏まえ、行政・医療機関が医療関連感染予防・管理に係るガイドライン・マニュアルを改訂するなど、医療関連感染予防に関する対策を進めています。これまでに蓄積された教訓・知見・技術をもとに、本研修では、より強靭な保健システムの構築に向けて、日本の事例を参考にしながら、各国の主要医療機関の担当者が医療関連感染予防・管理に係る知識・技術を学ぶ機会を提供しています。

2021年度(遠隔研修)
「医療関連感染予防・管理(A)」(英語) 3ヶ国6名(モルドバ2名、北マケドニア2名、ウクライナ2名)
「医療関連感染予防・管理(B)」(英語) 6ヶ国8名(アルジェリア1名、エジプト2名、イラン1名、モロッコ2名、イエメン1名、チュニジア1名)